地震保険についてはそれほど強力な販売活動は行われていなかった。
第四は、消費者の損害保険に対する意識である。
日本では貯蓄型の生命保険は普及している。
しかし、掛け捨て型の損害保険、特に家計保険の普及率は低い・災害の都度「災害は忘れた頃にやって来る」と災害対策の後追いを指摘され、あるいは「喉元過ぎれば熱さを忘れる」国民性のためか、損害保険は普及しにくい土壌である。
地震保険加入の前提となる火災保険自体の普及率も約五○パーセントと低いため、全部付帯としても上限は五○パーセントである。
家財の担保方式l従来家財については家財が全損でない場合は家財を収容している建物の損傷度に応じて支払われることになっていた。
改定では家財に半壊および一部損の損害区分を新設し、家財自体の損傷度に応じた損害認定を行うものである。
従来はマンションで建物に損傷はなく家財に損害の生じた場合に支払われなかったため設けられた。
商品内容の改定によって、また最新のデータにより見直しを行い、全般的に若干の引下げとなっている。
また建物と家財の担保内容の差はなくなったため、建物と家財の地震保険の第八次改正とその評価引受限度額l建物五○○○万円一従来一○○○万円一・家財一○○○万円一従来五○○改正点は、第一は、建物の保険金額の引上げである。
引上げの要請は世論ではあるが、現状では地震保険の加入契約金額は平均約五六○万円であり、限度額上限の五○○○万円に加入するためには一億円の火災保険の加入を必要とする。
住宅物件では一億円以上の契約は全件数の一パーセントに過ぎない。
低い契約金額の実態からみて、引上げは少数の高額契約者のためであり、あるいはJA建物更生共済の限度額二億円に対抗するためともいわれており、限度額を引き上げても、普及率の大幅な上昇は期待できないのではないか。
第二は、非加入の大きな原因である保険料の割高感に関するものである。
保険料率は改定され、若干の引下げは行われたが、割高感は解消されていない・第三は、総支払限度額の金額である。
この仕組みは巨大地震によって、支払保険金総額が総料率は同じとなる。
従来の一兆八○○○億円から三兆一○○○億円に引き上げられた。
総支払限度額はわが国の想定しうる最大級の地震発生の場合にも支払保険金は限度額の範囲内に収まるように決められている。
したがって支払限度額の改定は保有契約高(保険金額)の増加によって、予想最大保険金の額は総支払限度額を超える可能性も出てきた場合に行われてきた限度額は普及率の上昇・保有金額の増加につれて引き上げられてきている。
同時に静態的には普及率は上昇すればするほど、また巨大地震であればあるほど、保険金は削減される。
第四は、すべての火災保険にセットされていたとしても、現在時点の上限は火災保険の普及率であり、半数に近い消費者は地震保険では救済きれない・第八次の改定によっても大幅な普及率の上昇は期待できないのではないか、また現行制度は巨大地震であればあるほど、地震保険は有効に働かないという仕組みとなっている。
支払限度額を超えると、この割合によって地震保険金を削減するものである。
この限度額は阪神大震災の規模を首都圏において想定した場合、人口比あるいは経済の集中状況から十分であろうか。
現在、南関東地方の地震保険の総保険金額は約一三兆円(九六年三月末)である。
仮に、この半分の保険金六兆五○○○億円の支払いという事態になると、支払限度額は三兆一○○○億円であるから、地震の保険金は契約者の期待している金額の半分になることを意味している。
つまり保険金額一○○○万円の火災保険は地震保険を付帯すると地震保険の保険金額は五○○万円となる。
しかし、総支払保険金が限度額を超えるため保険金は半減されニ五○万円となる。
兵庫県と日本弁護士連合会は、住宅の持ち主全員の強制加入による、「共済制度」を提案している。
内容は月額一○○○円程度の掛け金を徴収して、被災者に最高千数百万円の住宅資金を支給するとして、大震災の発生による財源の一時的な不足には国債を発行して補う。
医療・年金・自動車損害賠償で制度化している強制加入の保険を地震についても構築しようというものである。
また、全労災協会は「基金制度」を提案している。
長崎県の雲仙普賢岳の噴火災害では全国からの義援金に県の起債による資金を加え災害対策基金を創設し、これによって被災者は最高一五○○万円を受け取ることができた。
これをヒントに国と各県に災害対策基金を創設し、時期を限った増税、あるいは起債によって財源を確保し、最高五○○万円程度の被災者に住宅復興助成金を支給するというものである。
ニつの提案は普及率一○パーセントの現行地震保険と比較すると格段に優れた災害保障制度である。
今後大地震の発生した時に、阪神・淡路大震災の悲劇を繰り返さないためには、生活の基盤となる住宅の再建を支援する制度は絶対に必要である。
しかし、日本政府は地震のような自然災害による私的資産の被災については補償できないといっている。
一方、米国では一九九四年のノースブリッジ地震の際にはニ億ドルを被災者の住宅補助に支出している。
個人の自立を原則とする米国においてさえ、住宅については政府はこれだけの助成を行っている。
日本列島は地震活動期に入ったとの見方は強く、国民を災害から救済し、民生の安定を図るには、巨大災害を想定し、最大予想損害に対応できる補償制度を構築しなければならない・現行の地震保険は公的保険でありながら、基本となる火災保険は加入は自由であり、しかも地震保険の付帯も自由であり、付帯率は低く、また、普及率の地域的格差も大きい。
小規模な地震災害では加入者に有効に働くことになっている。
しかし、巨大地震の発生は加入者の受取保険金を削減し、しかも公正に配分されるべき国の財政資金は一部の保険加入者のために支出する制度である。
また普及率の上昇によって、契約金額は増大し、支払保険金は増加すると、支払限度額というパイは一定であるため、個々の受取保険金は削減される仕組みである。
補償制度は地震リスクの巨大性・異常性に対応でき、かつ地域的な逆選択を防ぎ、また必要とされる財政資金の支出は被災者に公平に配分される仕組みでなければならない。
現行保険制度の抜本的な改革か、新たな仕組みが必要である。
すでに述べたように兵庫県、また全労災等々から建設的な提案も行われている。
望まれる補償制度は第一は、巨大地震に備え、生活の基本条件である住宅は個人資産であっても社会公共的な資産、社会的インフラとして確保を図るとの視点を必要とする。
そのため全国民の自助努力・保険料によって数兆円規模の補償ファンドを形成し、すべての被災者はファンドから救済を受けられる制度であること。
なお、形成過程の大災害、あるいはファンドを超える災害には現行制度同様に財政資金を導入する仕組みを必要としよう。
第二は、地震リスクの特殊性から逆選択を回避するには、列島全域がリスクに曝されているとの認識で強制保険とする。
すでに強制保険には自賠責保険というモデルもあり、自動車社会における被害者救済と賠償資力を確保するため、公的な強制保険となっている。
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